「パテントクリフ(特許の崖)」に苦しむ国内製薬大手、第一三共からウルトラCはやはり出なかった。
眞鍋淳社長COO(最高執行責任者)は4月の通期決算会見で「収益を支える重要な施策を検討中」と語り、中山讓治会長CEO(最高経営責任者)も「中長期に成長を加速する打ち手」になると説明。勝負に出るかのようににおわせていた。
結局、7月末に発表されたのは、特許が切れた新薬(長期収載品)41製品を医薬品卸大手のアルフレッサ ホールディングスに84億円(棚卸し資産を除く)で売却するというもの。崖下から這い上がるレベルの一手ではなかった。
新薬開発メーカーは一定期間にわたり特許で守られた新薬で稼ぐ。特許が切れた後は他社の後発品(ジェネリック医薬品)が参入し、一気に売り上げを奪われる。大型製品を持つ会社ほど特許切れが業績に与えるダメージは大きく、特許の崖と呼ばれる。
第一三共の場合、高血圧症治療薬「オルメテック(一般名オルメサルタン)」が世界で2841億円(2016年3月期)を売り上げていたが、16年以降に主要市場で相次いで特許が切れた。
近年の業績は上図の通り。中期経営計画(21年3月期までの5カ年)では「オルメサルタンによるパテントクリフがあっても18年3月期の営業利益1000億円」としたが、実績は763億円にとどまり、目標に程遠いものだった。