最近では大衆薬事業を展開する完全子会社、第一三共ヘルスケアの売却が取り沙汰されているが、これとて2000年代に競合他社がノンコアの大衆薬事業を売却する中、医療用医薬品事業とシナジーがあるとみてむしろ買収で強化した歴史がある。営業利益率十数パーセントで連結業績に貢献はしているが、スイッチOTC(医療用医薬品の大衆薬化)の国の門戸が実質閉ざされたままなので思うようには伸びていない。

 幾たびと裏目に出ても冒頭のオルメサルタンのおかげで業績を維持してきたが、その特許もついに切れて業績は悪化した。業界用語でいうパテントクリフ(特許の崖)だ(図2)。

 加えてつらかったのが、「何をしたい会社かよく分からない」との批判。例えば武田薬品が大型買収を繰り返してメガファーマ(巨大製薬会社)への道を、エーザイがアルツハイマー型認知症治療薬に強い会社の道を、中外製薬がバイオファーマの道を進む中、ランバクシーの後始末に振り回された第一三共は独自色を出せずにいた。

 そんな時期に飛び込んできたのが、良好なデータを示したがん治療薬の芽だった。その後期待感で株価はじわじわと上がったが、今年3月、準メガファーマの英アストラゼネカと一部がん治療薬での開発・販売提携を発表すると株価は一気に跳ね上がった。

 第一三共は世界では20番手以下で、研究開発費はメガファーマの5分の1ほど(図3)。がん治療薬の開発を急ごうにも自社だけでは限界があった。がん治療薬の開発・販売実績のあるアストラゼネカの力を借りることで、第一三共の製品ポテンシャルを最大限に発揮できると市場は評価したのだ。