『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。
担当者の思い込みがクレームをエスカレートさせる!
クレームを受ける側は、「怒っている相手は、自分が何を求めているかわかったうえで、要求を通すための手段として怒っている」というふうに考えがちです。もちろん、そのとおりのケースもありますが、そうでないケースも多くあります。そのため、お客さまの怒りには、その原因や落としどころを探りながら対応する必要があります。
しかし、ここで意外にも障害となるのが、多くの現場で用意しているマニュアルです。マニュアルはお客さまに失礼なく対応し、一定の水準でサービスを提供するためのものですが、そのことがかえって、個々のお客さまの気持ちに沿った対応を難しくしている面があります。
お客さまの怒りの背後には、たとえば、「困り果てて途方にくれている」「店への小さな不満が積もり積もって爆発した」「自分の満たされない気持ちを埋めたい」「ほかの人へ迷惑をかけるのが申し訳ない」「自分の正しさを誇示したい」など、さまざまな事情や思いが隠されています。
そして、怒っている本人が必ずしもその原因や、怒りの収めどころを自覚しているとは限りません。また、具体的にどうしてほしいのかわかっていない人が珍しくないのもやっかいなところです。ですから、お客さまの怒りには、その原因や落としどころを探りながら対応していく必要があるのです。
しかし、マニュアルによって、主だったクレーム内容や対応パターンが頭に入っているがゆえに、思い込みから勘違いをして、お客さまの怒りに火をつけしまうようなこともよく起きています。たとえば、次のようなケースです。
NGケース マニュアルが生んだ思い込み
信販会社でお客さま相談室の電話担当として働くAさん。電話の内容はお客さまの勘違いによるクレームも多く、それに対してはマニュアルどおりに説明することで大きな問題に発展することはほとんどありませんでした。
ある日、カードの不正利用についての問い合わせがありました。すでに上司が2度電話に対応していて、手続きに関する説明は終了。Aさんが出た電話は3度目です。
お客さま「先ほども連絡しましたKと申します。手続きのことで……」
担当者A「はい! カードを不正利用されたとの報告を受けております。不正に利用された金額につきましては、当社の規定でお申し出の日から換算して90日以内とさせていただいております」
お客さま「いや、そういう話じゃなくて、手続きの……」
担当者A「何度も申し上げておりますが、当社の規定がございますので、本日より90日以前の不正利用については補償しかねます」
お客さま「その話は、前の担当者にうかがっています。それで……」
担当者A「何度お電話いただきましても、補償金額は変わりません。ご納得いただけないでしょうか?」
お客さま「いや、もういいから前の担当者に代わってくれない?」
担当者A「当社の規定に沿って回答させていただいておりますので、誰に代わっても、」
お客さま「もういい加減にしろ! こっちの話を聞きもしないで、私をクレーマーだと決めつけているのか? お前じゃ話にならない。前の担当者と代われ!」
結局、Aさんの上司が電話に出て話を聞いたところ、「説明したカードの不正利用の手続きがうまくできなかったので、手続きの確認をしたかった」ことが判明。マニュアルどおりに対応したはずのAさんは、上司から大目玉を喰らうことに……。
マニュアルを鵜呑みにして同じ対応を繰り返していると、相手の真意や感情をつかむという基本をおざなりにしがちです。マニュアルを過信しないように注意してください。