ダイヤモンド社刊 2400円(税別) |
「アメリカの伝統では、社会的機関は社会を越えた目的のための手段である」(『企業とは何か』)
アメリカは、国、国家、人種に絶対的価値を付与する社会至上主義と、法を倫理的な価値とは関係のない交通法規扱いする功利主義のいずれも拒否してきた。
アメリカは、社会とはそれ自体が目的ではなく、理想のための手段であるとする点において、信じられないほどに、時には幼稚というほどに、理想主義的である。かくしてこの国は、あるときはドル信仰に取りつかれた我利我利亡者とされ、あるときは理想を求めて世界改造に取り組むドン・キホーテとされる。
ドラッカーは、アメリカが本性的なものとしての帰属意識を理解できないのも、このアメリカ特有の社会観のゆえだと言う。
アメリカは、ナチズムを嫌悪するドイツ軍兵士がなにゆえによく戦いうるかを理解できなかった。愛国心は人間本性のものとして、その時々の信条によるものではないという他の国にとっての常識が理解できない。
もちろん、国は重要である。しかしそれは、国が存在するからではない。それが自分たちの信条、すなわち自由と平等を体現する存在になっているからである。
「アメリカでは、社会そのものを目的としたことは一度もない。逆に、社会そのものを、個としての人間の倫理的な価値と無関係の功利的な手段としたことも一度もない」(『企業とは何か』)