第2の問題はプロジェクトを進める能力である。会社の方針と自分たちの部署やチームが達成しようとしていることの整合性を確保しながら、正しい相手と適切な形で組んでプロジェクトを進める必要がある。そのためには、協業相手であるベンチャーの特性を把握し、上手に使いこなさなくてはならないのだが、それができていない。相手の業務遂行能力を正しく把握し、できることを見極め、欠点については早めに手を打つことが必要だが、大企業にはそのあたりの知見が著しく欠如している。

 また、単なる元請・下請の関係ではないところと協業するノウハウも欠如している。こちらにイニシアティブがある発注は得意だが、同格の立場で業務を進めるのは難しい。相手側の技術の本質、思考・行動、能力などを評価し、戦力分析などをしっかり経たうえで、自社の強みや弱みとの組み合わせを考えることが大事になるが、そもそも自社の強みや弱みも正しく把握できていなかったりする。しかも、もともと相手の専門領域についてはほとんど土地勘がないので何もわからないというのが実情なのだ。

それでもベンチャーとの協業を
投げ出してはいけない理由

 残念ながら、このような協業に必要な能力がまったくといっていいほど培われていないのが、現在の大企業である。したがって、ベンチャーとの協業がうまくいくはずもない。しかし、そんなことを憂えても仕方がない。デジタル時代の新しい技術はどんどん生まれてくるのだし、その多くはベンチャー企業発なのだ。真面目で誠実で、こちらの言うことをいちいち聞いてくれる、昔からの下請け企業とだけビジネスをしていては時代に取り残される。

 やらない、という選択肢はない。何が何でもベンチャーと協業する能力を身につけるしかないのだ。失敗すると困るかもしれないが、7~8割は失敗に終わるといわれるM&Aの損失に比べれば、 たいした損失ではない。少々の失敗など会社にとってはどうということはないのだ。なによりも懸念すべきは、成功できないことよりも、むしろ羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くという姿勢のほうなのである。

 まずは相手企業の選定を地に足のついた態度で行えるかどうか。世間の評判に踊らされず、よさそうだと思う技術や人気企業があれば、本当にそれでいいのか、その会社でいいのか、似たようなことをしているほかの会社はないのか、きちんと調査することが大切だろう。そして実際に協業にまでこぎつけたなら、たとえ失敗したとしても、なぜ失敗したのか、どのような進め方にすればうまくいくのか、同じ轍を踏まず、その反省点を次に活かせるようめげずに協業の技術を蓄積すれば、道は開けるはずだ。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)