16億円で買った広告塔

 鹿島買収でメルカリが目論むのは、キャッシュレス決済「メルペイ」の普及だ。急増する「〜ペイ」の名がつく決済サービスの中で、今年2月にサービスを開始したメルペイは後発組。登録数は200万を超えたが、競合の背中は遠い。

 数多くある決済サービスで、自社のものを使ってもらう有効な手法の一つは、使わざるを得ない場を強制的に生み出すことだ。

 例えば、「PayPay」を展開するソフトバンクは、ヤフオクドームで開催される福岡ソフトバンクホークスの試合で、PayPayで支払いをすると生ビールが半額になるなどのキャンペーンを展開。また、「楽天Pay」を展開する楽天は、ヴィッセル神戸や楽天イーグルスのスタジアムをキャッシュレス化するなど、自社決済に囲い込む場として活用している。

 「グッズや飲食販売でのキャッシュレス決済の利用や、チケットのペーパーレス化でスタジアムが快適になる。決済は日々利用するローカル色が強いサービス。スタジアムをショーケースとして、新しいチャレンジの場として活用できる」と小泉社長は相乗効果を強調。メルペイ経済圏の本拠地としての期待を寄せる。

 また、国内メルカリ事業についても、「メルカリの利用者は20~30台の女性が中心。40台以上の男性にアプローチできるサッカーの可能性は大きい」(小泉社長)と広告塔としての役割を狙っており、鹿島の選手にメルカリで出品してもらうことなども考えているという。

 昨年6月に上場し、約600億円を調達したメルカリ。米国メルカリとメルペイを強化すべく人材獲得などを進める一方で、旅行などの新規事業開発を担っていた子会社ソウゾウを7月に解散。また、シェアリング自転車サービス「メルチャリ」事業も譲渡し、事業の選択と集中を進めていた。

 決算で赤字が続いていることについて、小泉社長は「赤字というPL(損益計算書)だけでなく、BS(貸借対照表)やキャッシュフローのバランスと事業の成長が重要だ」と訴える。メルペイ普及のために投じることになる、16億円という鹿島の買収額。ソフトバンクグループがPayPay普及のために投じた2度にわたる「100億円キャンペーン」と比べれば、メルカリにとって“お得な”買い物なのかもしれない。