佐山 実をいうと、私はそんなに悲観していません。といってもこれは全然ポジティブな意味ではありませんが……。何が起きても人間は必要です。つまり、クビをきる対象としての人間が必要なんです。AIは機械ですから責任が取れません。しかし何かあったとき、クビをきらないといけないんです。いかにAIが進歩しても、責任能力は絶対に機械には獲得できません。なぜなら彼らは死なないから。死ぬ能力がある者じゃないと、責任は取れないんです。

佐宗 なるほど(笑)。

佐宗邦威(さそう・くにたけ)
BIOTOPE代表。戦略デザイナー。京都造形芸術大学創造学習センター客員教授 大学院大学至善館准教授東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科修了。P&G、ソニーなどを経て、共創型イノベーションファーム・BIOTOPEを起業。著書にベストセラーとなった『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』(ダイヤモンド社)など。

佐山 だからAIがどこまで進化しても、各部署にただボーッと座っていて、何か悪いことが起きたときにクビをきられる人は必要なんです。もちろん、そういう人材になるか、それとも、佐宗さんが語っているような発想法を駆使して、もうちょっと能動的な仕事に就くかの二者択一になると思いますね。

佐宗 なるほど、僕は「ビジョン・ドリブン」と「イシュー・ドリブン」という分け方をしましたが、イシュー・ドリブンな世界の仕事というのは、責任を取る仕事、つまりマネジメントにシフトしていくわけですね。

佐山 何かあったときに責任を取る人間はつねに必要ですから。言葉は悪いですが、いわゆる「人柱」ですね(笑)。ただ、そういう人柱になるにしても、AIなどについてある程度わかっていたほうがいいでしょうね。そういう意味で、人間に対する要求事項は何れにしても変わっていくでしょう。

佐宗 逆に、「ビジョン・ドリブン」の世界では、人間に対する要求事項はどうなりますか?

佐山 単純に言えば、「機械にはできないことをやれ」ということになるでしょうね。「アントレプレナーシップ」と言ってしまうと陳腐になりますが、他人や機械から言われる前に、「自分のやりたいこと」をどんどんやっていく人たちのほうが幸せな人生を送れるようになるでしょう。

佐宗 研究者、アーティスト、アントレプレナー、宗教家、思想家といった、「ないものから何かをつくり出す人たち」ですね。

佐山 そういう人にとっては、AIやロボットは自分の能力を拡げてくれる道具になるわけです。「AIがあるからこそできること」というのは増えていきますから、「ないものから何かをつくり出す人たち」には便利な世の中になるでしょうね。そういうツールが発達していく以上、そういう人種はもっともっと増えていいと思いますね。

AIそのものには創造性はない

佐宗 AIが発達していけば、より多くの人がクリエイティブな生き方ができるようになるというわけですね。

佐山 はい、そう思います。ただし、AIそのものにはクリエイティビティはなくて、あれは基本的には「お絵かきツール」です。「こういうものを描きたい!」と思うのはあくまでも人間であって、AIはそれをフォローなりサポートなりしてくれるツールです。油絵の技能を身につけようと思えば何年もかかるでしょうが、AIを使えば「こういう感じの油絵をつくりたい」という思いを瞬時に実現できるような時代はもう確実にやってきている。