佐宗 京都造形芸大で授業をした際にも、「絵を描く」というハードルをどうやれば軽減できるかをずっと考えていました。Googleの「Autodraw」のように、人間の落書きをイラストに変換してくれるツールがあったり、写真を別の絵画に変換してくれるものがあったりしましたよね。当時は、まだ完成度が低いため、自分のビジョンの可視化に役立つとまでは言えないなと感じました。

佐山 基本的に、AIがやっているのはマネなんです。マネを極限まで効率化しているわけですから、たとえばすでにデータがある「ゴッホの絵画」について、タッチをマネたりする技術はすごいです。「それっぽいもの」をどんどんつくるということは、AIの使い道としては有効だと思います。
ただこれには限界があることを忘れてはいけません。誰かがすでにやったようなスタイルを模倣できるにしても、まったく新しいものをつくる上ではこの技術は使えません。完全に新しいものは本当のアーティストにしかつくれません。また、市場で求められるものには、既存の商品との親和性だけでなく、ある程度の新奇性が必要になりますから、商業目的であるにしても、そのままではAIは役に立たないはずです。

AIがどこまで進化しても、「会社でボーッと座っている人間」はやはり必要だ【ニューヨーク州立大・佐山教授】

佐宗 「ほどほどの親和性さえあればいい」というときは、AIは役に立ちうるけれど、新奇なものを突き詰めていくアートやビジネスの世界では向かないと。

佐山 そうです。AIを使った瞬間に「どこかで見たもの」になる。それは必然です。AIは「どこかで見たもの」を使ってトレーニングしているのですから。計算機を使って本当に新奇なものをつくろうと思ったら、根底から全部自分で考えなければいけませんから。

(第3回に続く)