業績不振が続く三陽商会。2020年2月期第2四半期の連結決算でも8.6億円の営業損失を計上、6億円の赤字となった。当初は黒字予想を立てていただけに、先行きの不透明さが一段と増す。通期決算で“4期連続最終赤字”を避ける策はあるのか。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
下方修正に次ぐ下方修正
決算予想に見える「甘さ」
「下期は反転攻勢をかけますから」――。三陽商会の岩田功社長は、7月30日の2020年2月期第2四半期決算の席上で、自信満々に言い切った。
とは言うものの、三陽商会の業績は惨憺たる有様だ。当初は上期で営業利益5000万円、純利益1億円の黒字見通しの目標を掲げていた。
ところが、7月8日に上期は2億円の最終赤字になると下方修正し、黒字目標を撤回。その上、決算の蓋を開けてみるとさらに数字は悪化しており、営業損失8.6億円、最終損失は6億円まで落ち込んだ。
赤字の主な原因は、売上構成比の6割を占める百貨店の売り上げが振るわなかったためだ。
しかし、要因はそれだけではない。繰り越し在庫の消化、前期で行った希望退職の影響額、ポイント値引きの引当金の増加や店舗販売員の正社員化や人手不足によって店頭販売派遣スタッフを採用したことによる給与増加……など、てんこ盛りである。
三陽商会は、2015年に「バーバリー」のライセンスを失った後は、「マッキントッシュ」など、地道に自前のブランドを育ててはきた。だが、いまだにバーバリーを超えるほどのブランドを作ることができず、16年12月期に最終赤字になってから、まだ一度も通期で黒字化していない。
それにもかかわらず、通期では「最終利益7億円」という業績予想を堅持する強気の姿勢を貫く。
その理由は、下期に大型の施策を打つためだ。
まずは、20代後半から30代前半を中心とした女性向けの新たなファッションブランド「CAST:」を立ち上げる。これは、「映画を見ながら商品が買える」“シネマコマース”の手法を取り入れた全く新しいブランドだ。ターゲット年代の若手社員によるチームが企画したため、トラッドを得意とする三陽商会において、カジュアルやフェミニンなどのデザインも揃えてきたのが特徴だ。百貨店を中心とした展開で、30店舗を出店予定である。「百貨店の2階や3階の女性ファッションのフロアは手付かずだった。このゾーンに対応していく」(岩田社長)という。
もう一つが、三陽銀座タワーをフルリニューアルし、三陽商会のブランドが一堂に会するような「GINZA TIMELESS8」を9月6日にオープンすることだ。
ここには、新規で立ち上げるオーダースーツブランド「STORY&THE STUDY」の店舗も設置する予定だ。地味な施策に見えるが、じつは三陽商会のデジタルトランスフォーメーションの一環として、内部的にはオーダースーツは大きなプロジェクトである。