購買力平価ベースで中国の世界経済に占める割合が
米国を上回った年
米国と中国の覇権を巡る戦いが2018年以降に顕在化した。この一つの象徴が、18年7月、米国が輸入する中国製品のうちロボットや工作機械など約800品目に約340億ドルの制裁関税を発動し、中国も同規模の報復関税を課したことだった。その後、第2弾、第3弾と制裁関税などが続き、19年5月には、中国の華為技術(ファーウェイ)や関連企業68社を米国企業の製品販売禁止リストに指定した。
19年6月下旬の米中首脳会談で一時的に休戦状態となったが、ほぼすべての中国製品に関税を課す第4弾を9月に発動予定で、このような対立を生み出す要因は何か。
それは中国の経済力が米国を凌駕しつつあるためだ。国際通貨基金(IMF)データでは、市場為替レートベース(ドル換算)で、1995年の米国、中国、日本の世界経済に占める割合は各々24.6%、2.4%、17.6%であったが、10年に中国は日本を上回り、同22.7%、9.2%、8.6%になった。18年は同24.2%、15.8%、5.9%で、米国は中国をまだ上回っている。
だが、財・サービスの生産量で見た「購買力平価ベース」では、14年には中国は米国を上回っている。IMFデータによると、購買力平価ベースで、95年の米国、中国、日本の世界経済に占める割合は各々19.9%、5.9%、7.8%であったが、99年に中国は日本を上回り、同20.6%、7.2%、7.0%になった。18年は同15.2%、18.7%、4.1%で、中国は米国を凌駕している。
この事実は米国も十分に理解しており、それが米中貿易戦争を引き起こす要因の一つとなっている可能性が高い。なお、IMFデータによると、81年から20年における1人当たり国内総生産(GDP)の平均成長率(ドルベース、予測を含む)は、中国11.3%、米国3.5%、日本2.7%であり、この成長率が継続するとき、中国の1人当たりGDPが日本、米国を追い抜くのは、41年、47年となる。米国と中国という超大国の狭間で、覇権交代の確率をどう予測し、日本がどう生き抜くのか。真剣な議論が望まれる。
(法政大学経済学部教授 小黒一正)