米中通商協議は再開も
「新冷戦」は続いている
6月28~29日、大阪でG20(主要20ヵ国・地域)サミットが開催されたが、それよりも注目を集めたのが、同時に開催された米中首脳会談であった。米中首脳会談では、(1)通商協議の再開、(2)3000億ドル規模の中国製品に対する追加関税の発動見送り、(3)米国企業によるファーウェイへの部品輸出の一部解禁、が合意された。こうした合意は、表面的には中国経済にとってプラスの動きである。
米国政府は今年5月、2000億ドル規模に達する中国製品の輸入関税を引き上げ、ファーウェイへの部品供給停止を米国企業に要請し、米中間の通商協議は実質的に停止していた。米国政府が中国政府に対し産業補助金制度の抜本的な是正など受け入れ難い条件を要求し続けたため、中国政府は協議の継続に意義を見出せなくなったからだとみられる。
中国政府は直前まで、米中首脳会談が開催されずにG20大阪サミットが終わること、3000億ドル規模の中国製品に対する追加関税が発動されることを覚悟していたとみられる。実際、世界のメディアは6月入り後、こぞってトランプ大統領と習近平国家主席が大阪で会談を行うか否か、会談の落としどころはどこかについて注目した。
一方、米中首脳会談について論じる中国メディアは皆無に近かった。ちなみに、中国人民日報がG20大阪サミットの3大注目点として挙げたのは、(1)中露印会談、(2)習近平主席と各国首脳の2国間協議、(3)WTO改革を含む貿易・投資における共通認識構築であった。ここには、再び米中間で制裁と報復の応酬が再開したとしても、国民が習近平国家主席に責任追及しないための配慮があるといえよう。
6月に開催された米中首脳会談を受け、米中通商協議は再開されることになったが、これは必ずしも米中新冷戦の終わりを意味しない。米国政府は、台頭する中国に対し、政治経済、外交、安全保障面での警戒心を緩めていない。特にハイテク分野において、米国政府は覇権争いを意識している。米国政府は今後も、中国のハイテク封じ込め策などを講じるとみられ、中国政府が米国政府に対し反発する事態が生じ得るとみられる。場合によっては、中国政府が米国製品を対象に追加関税を発動するリスクも残る。米中覇権争いはまだ始まったばかりとみるべきだろう。