まるで検索ワード?
妙な引きのあるタイトル

今回の秋季号では「韓国・フェミニズム・日本」という特集をたてた
今回の秋季号では「韓国・フェミニズム・日本」という特集をたてた

 韓国文学の盛り上がりやフェミニズムなど、世の中の動向は踏まえたものの、「ヒットを狙ってというより、あくまで自分たちが面白いと思うものを紹介したい一心でした」と坂上さん。だからこそ、3刷という売れ行きは「予想外」と驚く。一方で「韓国やフェミニズムといったイシューはSNSとの相性が良く、それも要因になったのではないでしょうか」とも考えている。

 ところで気になるのは、特集タイトルのつけ方だ。「天皇・平成・文学」、「韓国・フェミニズム・日本」と、キーワードを3つ並べるスタイルは、何とも言えない“引き”がある。

「皆さんそうおっしゃっていただくのですが、実は深く考えたわけではなく……(笑)。詩人の最果タヒさんが、このタイトル付けに対して『文芸誌っぽいけど、でもすごくGoogleの検索ワード感もあっていいな。検索じゃ出てこないものが出てくるのが文芸誌』とTwitterで仰っていて。そう言われてみると確かに、と。すごく腑に落ちて、さすが最果さんだと思いました(笑)」

 確かに、検索ワードのような雰囲気がちょうど今の時代にマッチしたのかもしれない。実際、SNS上ではこの特集タイトルから派生した“遊び”も生まれた。「診断メーカー」というサービスを使ったもので、名前を入れると架空の『文藝』の特集タイトルを作ってくれる。実際に3つのタイトルワードが羅列され、その結果をSNSにアップする流れが起きた。こういったSNSでの派生現象も、今の時代らしいヒットの仕方かもしれない。

 なお、特集では他にもこだわった点があるという。

「今回、特集では10人の方に短編を寄稿していただきましたが、そのうち5人が韓国人作家です。表紙や目次に載せる作家名の並びや作品の掲載順は、日本人も韓国人も、あえて混ぜて並べました。1つの文芸誌の中で、日本・海外と分けずに読んでほしいと思ったんです」

 昔と違い、海外とのアクセスが容易になった今、「日本の作家と同じ感覚で海外作家の書き下ろしを掲載したい」という思いもあったという。今回の秋季号では、その願いも叶えた形だ。

「でもよくよく調べてみたら、『文藝』の創刊号でゴーリキーの特別寄稿が掲載されていたんですよね。それを知って、改めてこの雑誌のすごさを感じました(笑)」