さらに特集の冒頭では、翻訳者であり韓国文学に造詣の深い斎藤真理子さんと鴻巣友季子さんの対談を掲載。韓国文学に精通していない人でも、理解を深めてから短編に入れる形にしたのだった。

gifを使った「動く表紙」
大きく反転させたデザイン

 もう1つ、リニューアルの大きな要素となったのが「デザインの一新」だ。アートディレクションにデザイナーの佐藤亜沙美さんを迎えて、これまでの重厚なデザインとは“真逆”といっていい、派手でポップなものになった。

「前のデザイナーの佐々木暁さんには長くお世話になっていたので、本当に泣く泣くの決断でしたが……。リニューアルするならとにかく反転させなければと思い、コンセプトを大きく変えて、他の文芸誌と一緒に並ぶ書店店頭でとにかく目立つようなものに、とは思いました。その上で物語性があり、見た人の感情をなにかしら喚起させられるイラストにできればと思ったんですね」

 さらに話題となったのが「動く表紙」だ。河出書房新社のホームページや公式Twitterでは、表紙のデザインが動くgifアニメーション動画を観られる。担当したのは、SNSにアップするgif漫画が注目されているクイックオバケさん。文芸誌では稀有だった、キャラクターの「文ちゃん」も登場する。

「gifのアイデアも、佐藤さんと相談を重ねる中で出てきました。もともとリニューアルにあたり、海外の文芸誌も研究したのですが、アメリカの文芸誌で表紙の動くものを見たんです。ウェブ上の宣伝やキャンペーンが主体になる中、そこで目立つには『動く表紙』がいいかもと考えました」

 先ほど、SNSで派生した特集タイトルの“遊び”に触れたが、それは偶然ではないのかもしれない。こういった新たなデザインの試みにより、そもそもウェブ上で話題に乗る下地があったとも見れる。ウェブの世界で目立つための施策が、水面下でSNSの盛り上がりにつながった可能性はあるだろう。

新しさの追求こそ伝統
逆転のチャンスはどこかにある

 文字通り、内容もビジュアルも“反転”に近いリニューアルだったが、伝統ある雑誌でここまで思い切った決断ができたのはなぜだろうか。