心臓病心臓病は危険因子のない人が突然かかることはほとんどありません Photo:PIXTA

ついさっきまで元気だった人が急に苦しんで意識を失い、最悪の場合、死に至ることもある心臓の疾患。周囲はほとんど前兆のない“突然死”に驚きを隠せないが、危険因子を持っていない人が急に亡くなることはほとんどない。では、どんな人に突然死の危険性があり、防ぐにはどのような対策が最も有効なのか。横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学主任教授の石川義弘医師に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 林 恭子)

前触れなく起こる突然死
心筋梗塞は「胸」に前兆も

――突然死を招く心臓の疾患には、どのようなものがありますか?

石川義弘医師石川義弘医師
横浜市立大学大学院医学研究科 循環制御医学 主任教授。エール大学医学部留学を経て横浜市立大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院科研究員、コロンビア大学、ハーバード大学医学部助教授、ラトガース大学医学部教授・同付属病院指導医(循環器内科)等を経て現職。日本および米国医籍登録(ペンシルベニアおよびニュージャージー)。病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介する「Open Doctors」の監修医師も務めている。

 心臓は血液を全身に送り出す臓器で、送り出された血液が脳や全身にまわることで、体の機能を維持しています。その機能が維持できなくなったとき、突然死に至ります。

 突然死を招く心疾患は大きく分けて2つあり、1つは心臓の筋肉がけいれんするように震えて心臓のポンプ機能が正常に作用しなくなる「不整脈」。もう1つが、心臓が酸素不足になり壊死を起こしたときに起こる「心筋梗塞」で、ポンプ自体が壊れてしまう状態です。

 なかでも致死的な不整脈を起こすと、数十秒で意識をなくします。「胸が苦しい」といって、そのまま倒れ込む方もいます。

 そのほか突然死を引き起こすものとして、中年以降に多い「大動脈解離」という劣化した動脈の破裂による大量出血で亡くなるケースもあります。

――こうした突然死に至るまでに、何か前兆はあるのでしょうか。

 心筋梗塞では、前触れのような症状もあります。軽い運動をしたりしたときに、心臓をつかまれるようなズーンとした嫌な重い痛みを体験したら要注意です。ただし、この胸の痛みは何分間か続いても、立ち止まって落ち着いていると良くなります。だからといって、油断は禁物です。

 これは心臓に供給される酸素が不足して胸に痛みや圧迫感が起こる「狭心症」。狭心症は、心筋梗塞の前触れ状態、危険サインだと思ってください。もしそういう症状が出たら、狭心症かどうか病院で調べてください。

 その一方で、厄介なことに、人や症状によっては前兆が全く現れず、本当に突然死に至ることもあります。そうはいっても、こうした症状を起こす方は、検診で血圧やコレステロール値、とりわけ糖尿病など何らかの危険因子を持つ方がほとんどです。こうした背景の全くない方が突然死することはめったにありません。