武富の決断やコメントから伝わってくるのは、自他共に認める熱血漢で、Jクラブの中で最も厳しい練習を課すことでも知られる曹監督を慕う思いであり、同時に騒動の行き先が不透明になっている現状となる。武富は同時にこんな言葉も綴っている。

「今いろいろなことが言われていますが、僕自身は曹監督の指導には愛情があったと思っています」

 いろいろなこととは一部スポーツ紙による、練習中における曹監督の言動を介して、複数の選手が心を病ませたという報道を指す。武富をして「指導には愛情があった」と言わしめている通り、ほとんどの選手は厳しさをポジティブに受け止めていたのだろう。

 今シーズンのベルマーレには24歳のMF中川寛斗が柏レイソルから期限付き移籍で5年ぶりに、28歳のMF古林将太がベガルタ仙台から完全移籍で4年ぶりに復帰。7月には29歳のMF山田直輝が、レッズからの期限付き移籍で約1年半ぶりに復帰して「10番」を託されている。

 キャプテンを担う30歳のDF大野和成は、曹監督が就任した2012シーズンから2年間ベルマーレでプレーした後にアルビレックス新潟へ復帰し、完全移籍の形で昨シーズンから5年ぶりに加わった。32歳の守護神・秋元陽太も、2016シーズンの1年間だけFC東京へ移籍している。

 27歳のDF岡本拓也は通常で1年、長い場合でも2年とされる期限付き移籍を3年目の昨シーズンも続け、最終的にはレッズからの完全移籍に切り替えた。今夏にセレッソ大阪から好条件でのオファーを受けていた26歳のエースストライカー、山崎凌吾も残留を決めている。

 過去にはMF永木亮太(現・鹿島アントラーズ)がセレッソ、アントラーズからのオファーを2年続けて断って残留。日本代表に名前を連ねるMF遠藤航(現・シュツットガルト)も、レッズから熱烈なオファーを受けながら曹監督の下でのプレーを選択したことがある。

 曹監督と選手たちとの強い絆の例をあげれば、それこそ枚挙にいとまがない。厳しさの下で成長あるいは復活できるという評判を聞きつけ、望んで期限付き移籍してくる中堅選手も多い。毎年のように加入する高卒や大卒のルーキーも、ベルマーレの練習に数日間参加した中で決断を下している。

 それだけ強い信頼関係が育まれてきた証といえるが、毎年のように選手が入れ替わることを余儀なくされるサッカー界の潮流は、ベルマーレも例外ではなかった。経験したことのない曹監督の厳しさに直面して、愛情ととらえられなかった選手やスタッフがいた可能性もまた排除できない。