世界の食糧問題、エネルギー問題、環境問題を一気に解決しようと目論む企業があります。その名は「ユーグレナ」。和名の「ミドリムシ」を意味するこの企業は、05年に起業後、世界で初めてミドリムシの大量培養に成功し、12年に東京証券取引所マザーズ上場を果たします。今回は、「2015年企業広報経営者賞」を受賞した同社社長の起業秘話を描いた『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』を紹介しましょう。

株式時価総額は上場時の10倍以上!
バイオベンチャー「ユーグレナ」の成功物語

出雲充著『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦』2012年12月刊。暖かい印象を与える手書きのタイトルが目を引きます。

 このほど、経済広報センター(日本経済団体連合会の広報機関)が主催する2015年の「企業広報賞」の選考結果が発表されました。同賞は優れた企業広報を実践している企業や経営者、企業広報の実務者らに贈られますが、第31回に当たる本年は、「企業広報大賞」にマツダ、「企業広報経営者賞」に伊藤忠商事の岡藤正広・代表取締役社長とユーグレナの出雲充・代表取締役社長が選出されました。

 出雲社長は、藻の一種である和名ミドリムシ(学名ユーグレナ)を中心とした微細藻類に関する研究開発および生産管理、品質管理、販売等を展開するユーグレナを05年8月に設立し、12年に東京証券取引所マザーズにおいて株式を公開、14年には同取引所第一部への上場を果たしました。

 株式公開後は一貫して売上高を拡大し、企業価値を評価する重要な指標の一つである株式時価総額は、上場時の106億円から約1300億円にまで増加しています。ミドリムシはその知名度向上とともに独自の食品や化粧品などの素材として利用されるようになり、また、ミドリムシに含まれる油を用いたバイオジェット燃料の研究開発にもチャレンジしています。

 本書『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』は、そのユーグレナの株式公開とほぼ同時期に刊行されたものです。

 この本の主役は著者でもある出雲社長自身であり、およそ5億年前に地球上に生まれた単細胞生物ミドリムシです。本書は、世界で初めてミドリムシの大量培養に成功したユーグレナというベンチャー企業生誕の物語であり、「どんなちっぽけなものにも可能性があり、それを追い求めていけば、やがてその努力は報われる」ということを出雲氏なりに証明してみせた本でもあるのです。