中央政府は“軍事介入”の
準備を整えている

 仮に香港社会の基本的治安や秩序が機能しなくなり、一部抗議者と警察の間の“武力衝突”が止まらずに、それが一般市民の安全や財産などに直接的な危害を加えることになれば、中央政府が人民解放軍を投入し、事態の沈静化を図るだろう。その可能性は全く否定できない。

 実際に、8月7日、国務院香港マカオ事務弁公室と中央政府駐香港連絡弁公室が広東省深セン市で共催した「香港情勢座談会」において、張暁明国務院香港マカオ事務弁公室主任(閣僚級)が中国共産党・中央政府を代表して次のように主張している。

「香港情勢がこれから一層悪化し、香港政府が制御できない動乱が生じた場合、中央がそれを静観することは絶対にない。香港基本法に基づいて、中央は出現しうるあらゆる動乱を収拾するだけの十分な方法と強大な力量を持っている」

 前回コラム「中国人民解放軍は香港情勢に「介入」するか?」でも議論したが、今となっては、中国共産党は香港に“軍事介入”する準備を完全に整えている。18日、香港に隣接する広東省深セン市では人民解放軍武装警察が香港情勢の沈静化を想定した訓練を、中国大陸で公用語として使われる普通語(マンダリン)ではなく、香港で日常的に使用される広東語で行っている。

 筆者自身は、中国共産党は解放軍を香港情勢に直接介入させる政治的決定には慎重に慎重を重ねるとみている。仮にそれを実行した場合、考えられる不確定要素として(1)短期的に香港社会は沈静化しても、香港人の反中感情は一層悪化する、(2)香港を拠点にビジネスを展開してきた外国企業が撤退し、香港の国際金融センター、アジアのハブとしての機能が失われる、(3)現在貿易戦争を繰り広げている米国との関係がより一層複雑化する、(4)政治・経済を含め、国際的にあらゆる“制裁”を受け、場合によっては孤立する、(5)来年1月に実施される台湾の選挙で、蔡英文総統率いる民進党が勝利する可能性が一気に高まる、などが挙げられる。