【深セン(中国)】香港と境界を接する広東省深セン市の競技場ではここ数日、数千人規模の人民武装警察部隊(武警)が集結している。抗議デモで混乱する香港に対し、中国が至近距離から力を誇示し、けん制する狙いがあるとみられている。
地元住民らによると、武警部隊がここまでトラックで運ばれ、収容能力2万人の競技場内でここ数日、訓練を行いながら暮らしている。武警は暴動鎮圧など、主に国内の治安維持を担当する。
競技場の通路では、迷彩服やTシャツ・短パンを着た若い警官の姿が容易に確認できる一方、一斉に大声で叫ぶ声が周囲に響き渡っていた。
中国メディアは最近、武警配備のもようを一斉に報道。これを受け、香港では本土当局が軍介入のような措置を検討しているのではとの懸念が高まる一方、報道規制が敷かれている中国でメディアがここまで大きく取り上げるということは、「香港の状況を深刻に懸念している」との中国当局のメッセージをさらに強く発することが主な狙いだとの見方も出ている。
この「深セン湾体育中心」と呼ばれる競技場は、数カ月にわたる抗議デモの中でも極めて激しい衝突が起こった香港元朗区の天水囲から、深セン湾を隔ててすぐのところにある。
いかなる形でも軍が介入すれば、すでにぜい弱な香港の状況を劇的に悪化させるともに、1997年の中国返還から50年は約束された「高度な自治」を根本から覆す事態に陥りかねない。
少なくとも、中国当局が実際に介入すれば、数百人の死者を出し、反体制派は決して許容せずとの中国当局のイメージを固めた1989年の天安門事件を想起させることになる。