戦後の貧しさを記憶し、数の多さゆえに結婚をせかされ、家事、育児、夫の世話、地域の付き合い、親の介護をこなし、すきま時間は遊びもせずにパートで家計を助けました。やっと手に入れた健康寿命までの自由時間にあれもこれも楽しみたい。そのためには年金の半分どころか退職金も「全部欲しい」のが本音で、愛は売り切れても「金の卵を産む鶏」の首をしめたりはしません。

 結局、この世代までは定年離婚が激増することもなく、夫に「亭主関白」の幻想を抱かせたまま「ATM機能」を維持させるという処世術がまん延しております。

 目下、定年進行中のシニアは「ポスト団塊世代」――。

 キャラの濃い団塊世代と違って政治には無関心、無気力、無責任な三無主義の「しらけ世代」と称されました。学生運動や仕事に全エネルギーをかけるのを「カッコ悪い」とし、一致団結は苦手で内向的でさめているといわれました。

 一億総中流社会で大事に育てられ、子ども部屋を持ち、習い事や、スポーツや音楽などの趣味も多彩。青春期にはバカンスにテニスやスキー、リゾート旅行を楽しみ、雑誌「ポパイ」「アンアン」「ノンノン」がファッションをけん引。ファミコンやアニメが流行し、ブランド志向などに強いこだわりを持つ人が増えました。

 繁栄期のあとにバブル崩壊や長引く不況を経験し、それまでの社会的価値観が大きく転換した世代でもあります。

妻と夫の文化摩擦が
国境紛争級に?

 このようなポスト団塊世代の定年後ライフはそれまでの「父帰る」(やんちゃな夫を家族が優しく迎え入れる)パターンとはひと味違います。その前の世代までは団地や社宅住まいに父母と子ども、手料理で家庭団らんなど「家庭のイメージ」は均質化していました。

 でも次世代はそれまでのダサい主婦向け雑誌と正反対の、エコやオーガニックなどにこだわったおしゃれな主婦向け雑誌の「クロワッサン」などに傾倒して、自立にこだわるライフスタイルを築いていきます。

 定年で家に入るということは、「妻のこだわり文化」が根付いた家庭に「夫のこだわり文化」が割り込むわけですから、当然文化摩擦も起こります。例えるならロココ調の家具でしつらえた居間に囲炉裏(いろり)端をつくるようなもので、アウェーどころか国境紛争級にもめるでしょう。