確かに眠りは浅く、夜、最低4回は目が覚め、常に寝不足を意識してはいたが、倒れたことは一度もない。健康診断の結果も、特に問題があったことはないので、不眠症というよりは個性ぐらいに考えていた。

 デパスを最初に飲んだ夜は、生まれて初めてぐらいの感じでスムーズに眠りにつけたし、途中覚醒することなく、明け方まで眠れて感激した。だが、決してすっきりとした目覚めではなかった。昼も眠気に襲われるようになったし、言われてみれば、パソコンの光がまぶしくて仕方なくなったのも、デパスを飲み始めてからだった。

 1ヵ月後、由未子さんは晴れやかな表情で医師の前に座った。

「先生、言われた通り薬を止めたら、1週間で症状が改善しました。もうパソコン作業も苦痛じゃありません。やっぱりあの薬が原因だったのでしょうか」

「そうですね、私の患者さんには、デパスの副作用と考えられる眼瞼けいれんの方が少なくありません。デパス等ベンゾジアゼピン系の薬は、国際的には慎重に投与すべき薬剤ということになっていますが、日本の先生方の間には、その認識がなかなか行き渡りません」

 由未子さんは腹が立った。

 もし、心療内科医から、デパスの副作用に眼瞼けいれんがあることと、それがどういう病気かを聞かされていたら、症状が出た時点ですぐに服用をやめていただろう。あるいは他の眼科医に、眼瞼けいれんの知識がちゃんとあったなら、やはり悩むことなく症状を治すことができたはずだ。

(患者ももっと勉強して、賢くならなくちゃ)

 心に誓った。

※神経眼科
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