同様に、アメリカの裁判所でナチスの元強制労働者に対する賠償決定の判決が出たケースでは、フォルクスワーゲンやダイムラー、シーメンス、イーゲーファルベンら独大手12社が、「記憶・責任および未来」基金(00年7月)を設立して個人補償を支払った。

 いずれも法廷内外で当事者が時間をかけて粘り強い折衝をすすめ、最終的には双方が現実的な判断をするという「知恵」を働かせ、問題を解決してきたのである。

 だが徴用工判決問題で安倍政権は、外交ルートなどを通じて文政権と時間をかけてでも問題解決のために話し合うという姿勢はみせないまま。とったのは、フッ化水素、EUV用レジスト、フッ化ポリイミドの3品目を対象とする輸出規制という強硬策だった。

一貫しない政府説明
曖昧な「安保上の管理」

 参議院選挙前の時期を狙って、右翼的なポピュリズムをあおり、支持を得るために強硬姿勢をとることが得策との判断をしたのだと考えられるが、対韓輸出規制は、明らかに「二枚舌」であり説得力に欠けている。

 世耕経産相は規制実施の方針を表明した当初から、「友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次いで、残念ながらG20(大阪サミット)までに満足する解決策が全く示されなかった」として、徴用工判決に対する不満を隠さなかった。

 その後、安倍首相も「(韓国側が)日韓請求権協定に違反する行為を一方的に行っている」と繰り返し批判した。

 しかし、徴用工判決問題を対韓輸出規制に絡めると、WTOルール違反の疑いが強いことに気付いたようだ。その後は、大量破壊兵器等の拡散防止、軍事転用防止とする「安全保障上の輸出管理策の一環」という説明に変えている。

 だが、韓国政府の徴用工判決に関する姿勢を批判する中で、打ち出した対韓輸出規制を、「安全保障上の輸出管理」策とするのは明らかに無理がある。

 さらに問題なのは、軍事転用や北朝鮮などへの横流しといった3品目に関する輸出規制の根拠が示せていないことだ。

 小野寺五典・元防衛相は出演したTV番組で、フッ化水素はVX・サリン・ウラン濃縮過程に使われる素材だと述べたが、こうした化学兵器の製造には市販品で十分だ。

 入手が難しい半導体製造に使う超高純度のものを使う必要はないし、韓国の業者がわざわざ北朝鮮に密輸するというのも不自然で根拠が見当たらない。