ストーカー被害
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お気に入りの「島の暮らし」のすべてが引き剥がされていった

『ストーカーとの七〇〇日戦争』書影
『ストーカーとの七〇〇日戦争』 内澤旬子著 文藝春秋刊 1500円+税

 本書『ストーカーとの七〇〇日戦争』の著者は2014年に小豆島に移住し、インターネットを通じて知りあったAと8ヵ月ほど交際。だが、様々な違和感から別れを宣告したところ、電話とメッセージが止まらなくなった。脅迫じみた内容も届くようになり、警察署に相談に行くことに。そこから警察官、刑事、検事、弁護士などを介しながら、逮捕、示談、裁判…とAとの“戦争”の日々が繰り広げられる。

 ストーカーによる傷害事件は、時々ニュースで目にするが、そこで伝えられる内容は、“外野”から見える事柄に過ぎない。本書を読んで、“被害者”のありのままの心情に触れると、その恐怖や困難の深刻さに気づかされる。

 Aに自宅の場所を知られているうえ、狭い島のコミュニティでは、近隣に引っ越しても新居がAまで伝わってしまう可能性がある。移住前に、東京から仕事の合間を縫って通い、ようやく見つけ出した家なのに、住み続けることは叶わない。愛犬ならぬ愛ヤギのカヨも、せっかく育んだ近所との交友関係も手放し、身を潜めて暮らさなければならない。狩猟免許もせっかくとったのに、何かあった時のことを考えて、銃は警察へ預けるしかない…。

 著者にとって大事な「島の暮らし」のすべてが引き剥がされていくことに、著者は「空っぽだ。生きている価値もない」と絶望しそうになる。だが、今までの暮らしを変えなければならないことは、周囲から被害者として「当然取るべき対策」と考えられ、その心情に寄り添ってくれる人はいない。