エアコンのない部屋でけいれん…猛暑と戦う生活保護の子どもたち生活保護の家庭がエアコンを設置するのは簡単ではない。社会保障の落とし穴は恐ろしい(写真はイメージです) Photo:PIXTA

エアコンがない部屋で暑さと格闘
子どもを苦しませた父親の後悔

 私にとって、2019年に入ってからの8ヵ月間の最大の関心事は、「日本の気候は、これからどうなるのだろうか」ということだった。暮らし心地も食糧価格も冷暖房費費用も、すべて気候に左右されるからだ。受ける影響は、貧困であればあるほど大きい。

 2019年の東京は、1月と2月は冷え込んだものの、3月は暖かかった。4月に入ると、冬並みに寒い日があったと思うと暖かくなり、5月末には真夏日が3日にわたって続いた。7月に入ると、梅雨が続く中に夏日が現れた。7月下旬に長い梅雨が明けると、いきなり夏らしい夏となり、8月に入ると最高気温が35℃を超える猛暑日が続いた。8月18日を最後に猛暑日は現れなくなり、急激に秋らしさが漂い始めた。

 この夏、両親と共に東京都内に住んでいるKちゃん(10歳)は、生まれて初めてエアコンのある住まいで夏を越した。Kちゃんの両親は、2人とも障害者だ。父親のIさんは働いていたが、母親による育児は困難に直面した。Iさんは妻とともに育児を担うために仕事を辞め、一家は生活保護で暮らし始めた。

 Kちゃんは4歳の頃から、暑さに晒されて体温が上がると、けいれんを起こしやすい。しかし、一家の住まいにはエアコンがなかった。夏の夜間のサウナのような暑さで、Kちゃんは毎夏、けいれんを起こし、そのたびに救急車で病院に搬送されて入院していた。

 容態が安定して退院すると、またサウナのような夜を過ごしながら、経過観察のために通院を続ける。年によっては、入院が2回以上になることもある。親子とも、心身の休まらない暑さをしのいでいるうちに秋が来る。けれども、今夏は違った。