2018年6月に認められた
「保護費でエアコン」のその後
生活保護で暮らす当事者たちと周辺の人々にとって、夏は文字通り「サバイバル」の季節だ。酷暑の夏となった2018年7月には、札幌市で60代の女性が熱中症で死亡した。女性の部屋には冷房装置があったものの、電気料金滞納により電力供給が停止されており、使用されていなかった。その日、札幌市の最高気温は31度に達していた。
2018年は酷暑の見通しがあったため、厚労省は6月27日、生活保護世帯に対し、保護費から冷房器具の設置を認める通知を発行していた。この通知は、さまざまな意味で画期的であった。
まず、暖房器具と冷房器具の併給が認められ、冷涼なはずの地域の酷暑・温暖なはずの地域の厳寒にも対応できるようになったこと。また、対象は「熱中症予防が特に必要とされる者」となっているが、年齢や状態による区分はなく、福祉事務所の総合的な勘案と判断を求めていることだ。
とはいえ対象となるのは、2018年4月1日以降に新たに生活保護で暮らし始めたり、生活保護のもとで転居したりするなど、「2018年度以降に、生活保護のもとで新生活を始めた」と考えられる世帯のみだ。
エアコンの本体価格の上限は5万円となっている。この価格で実際に購入できるエアコンと在庫を調べてみたところ、機種はおおむね2013年から2017年のモデルだった。実際の使用に関して、大きな問題はないであろう。
しかしながら、残っている商品が極めて少ない。また、本体費用に加えて設置費用は別途認められるものの、電気料金は考慮されない。エアコンがあっても使用できないのなら、熱中症で死亡した札幌市の女性と同じシチュエーションだ。
2019年の夏、生活保護世帯とエアコンに関して「令和」効果の風は吹くだろうか。