たとえば、一国二制度という形態をとり、2つの国が2人の権力者の下で、お互いに大幅な自治権を持ちながら、統一国家を宣言する――。実は、中国と香港、アメリカの50州と連邦政府、EUとその加盟国など、類似例は世界に結構あるのです。そして文大統領の思想が現実化し始めた場合、それは国民の一部から熱狂的に支持される可能性があります。一方で、韓国と軍事同盟を結ぶアメリカが、それを望むはずがありません。それがこの問題に潜む本当の「発火点」です。

「反日」は単なる手段か
南北統一までのシナリオ

 政治には目的と手段があります。私たち日本人は、文大統領の反日的な政策や言動を見ながら「日本と対立することが目的なのか?まったく理解できない」と思います。しかしそうではなく、日本と対立することが「手段」だったとしたら――。そう考えると、文大統領の今の理解し難い行動が、別の文脈に沿った言動であることが見えてきます。

 たとえば文大統領が、韓国経済が悪化することを承知の上で、日米から、特にアメリカからわざと距離を置かれることを狙って行動しているのだとしたら、どうでしょう。そうだとしたら、日韓の貿易面、安全保障面における摩擦は、双方の政治関係者が解決に向けていくら努力しても、終わることはないでしょう。

 そして、熱狂的な統一支持者が国民の2割程度に達するころ、文大統領の理想とする方向へ事は動き始めることになります。毛沢東もそうやって中国を動かしてきましたが、その歴史が繰り返されるかもしれません。このように整理すると、日韓の摩擦の問題は「理解し難い隣人の不愉快な行動」ではなく、「ある目的に沿った行動」だったと、後からわかる日が来るかもしれないのです。

 さて、最後に未来予測の専門家として1つ、別の論点について指摘します。それは、日韓の問題に限らず、世界のどの国の国民も深く考えなければいけないことです。

 権力者に強い権限を与えるほうが、国家運営がうまくいく時代が来ていることは事実です。しかし一方で、トップになる人物がどのような信念をもって動いているかをしっかり理解した上で、政治家を選ぶべき時代が来ているともいえます。平成のように、誰が首相になっても構わないという時代は終わり、政治家と国民が一蓮托生になることを余儀なくされるという意味で、まさに「新しい時代」がやってきたのです。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)