MQ会計は、会社の
本当の稼ぐ力を明らかにすることができる会計

 「さなえ、会社の決算書を持ってきたんだろう? テキストを見ながらでいいから、各項目の意味についてまとめてみようか」

 早苗は、千葉精密のP/Lの余白に、各項目の意味を書いていった(下図表)。

 

損益計算書は、会社の1年間の通知表
 

 「会社は儲けがないと潰れてしまう。だから、いくら儲かったか、損したかは重要な情報だ。つまり、P/Lは会社の1年間の『通知表』だ」

 「通知表かぁ。ちなみに千葉精密のP/Lは本当に正しいのでしょうか? 一応、黒字ですが、アンダーソンに『利益はあくまで意見に過ぎない』と言われてしまいました」

 早苗は、千葉精密のP/Lを目の前にして、現実の世界に引き戻されていく。

 「本当に儲かっているかどうかは『MQ会計』で分析してみないと何とも言えないんだけどね」
 川上は呟くように言った。

 「エムキューカイケイ? 何ですかそれは?」
 早苗が初めて聞く言葉だ。

 「MQ会計は、P/Lだけでは分からない、会社の本当の稼ぐ力を明らかにすることができる会計だ。まぁ、物事には順番がある。これは別の時に講義にしよう」
 早苗はMQ会計について気になったが、川上は話題を貸借対照表(B/S)に切り換えた。

 つづく

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008 年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。