もしあなたが突然、社長に就任することになり、会社の経営を立て直さなければならなくなったとしたら、どうしますか? 『なるほど、そうか! 儲かる経営の方程式』(相馬裕晃著、ダイヤモンド社、8月22日発売)は、つぶれそうな会社をどうしたら立て直せるのかをテーマにしたストーリー仕立てのビジネス書です。主人公は、父親に代わって急きょ、経営トップに就くことになった27歳の新米社長・千葉早苗。本書のテーマは、MQ会計×TOC(制約理論)。MQ会計とは、科学的・戦略的・誰にでもわかる会計のしくみのこと。MQ会計をビジネスの現場で活用することにより、売上至上主義から脱して、付加価値重視の経営に舵を切ることができます。もう1つのTOCは、ベストセラー『ザ・ゴール』でおなじみの経営理論。経営にマイナスの影響をもたらす要因(ボトルネック)を集中的に改善することにより、企業の業績を劇的に改善させることができるというものです。本連載では、同書から抜粋して、MQ会計×TOCでいかに経営改善できるのかのポイントをお伝えしていきます。
【あらすじ】
東京墨田区にある老舗時計部品メーカー「千葉精密工業」は、製造部と営業部の行き過ぎた部分最適の結果、業績が悪化。米国ファンドから出資を受け入れて危機を一時的に回避したが、1年後に業績が回復しなければ経営権が完全に奪われてしまう事態に。
新米社長の千葉早苗は、会計士でコンサルタントの川上龍太のアドバイスを得て、MQ会計やTOCの理論を学び、経営の立て直しを図るが……。果たして、早苗は1年で会社を立て直せるのか?
臨時株主総会
東京都墨田区向島にある時計部品メーカー千葉精密工業の会議室では、これから臨時株主総会が始まろうとしていた。
「俺は部品屋では終わらんぞ。いつか必ずオリジナルの機械式時計を作るんだ!」
千葉早苗は、父の大吉がいつも口癖のようにそう言っていたことを思い出していた。
1976年に創業した千葉精密工業は、大手時計メーカーの一次下請けとして機械式時計の「ムーブメント(機械式時計を動かす主要部品)」を製造する町工場だ。
創業時は3人だけだった会社も、現在ではパート社員を含めて130人を抱えるまでに成長した。
幼くして病気で母を亡くした早苗にとって、父の職場に遊びに行くのはごくふつうのことであった。工場の社員たちも、早苗をわが子のようにかわいがってくれた。
早苗にとって千葉精密の社員たちは、まさに「家族」のような存在となった。大学を卒業後、早苗が千葉精密で働くようになったのも自然な流れであった。早苗にとっては、父や工場の人と一緒に働ける日々は、平凡ながらもとても充実していた。