サブプライムショックに端を発するドル安が続くなか、ドルの一極基軸通貨体制は今後どうなるのか? ユーロやアジア通貨を含めた「三極体制」から円の地位急落まで、元財務官の榊原英資氏が持論を熱く語った。(聞き手:『週刊ダイヤモンド』 竹田孝洋)

榊原英資氏
さかきばら・えいすけ/1964年東京大学卒業後、大蔵省(現財務省)入省。95年国際金融局長、97年から99年まで財務官。99年より慶應義塾大学教授。2006年より早稲田大学教授、インド経済研究所所長。(撮影:宇佐見利明)

――現在米国発の金融危機の状況にあるが、ドル基軸通貨体制は崩れるのか? 

 米国が世界最大の経済大国であり、軍事大国であることに変わりはなく、当面崩壊することはないだろう。

――30年先もドルの基軸通貨体制は続くのか? 

 20年先までを見据えると、ユーロの地位浮上は間違いない。ユーロ圏の域内貿易の比率は65%に達しており、取引コストの低下という共通通貨のメリットを享受している。単一通貨圏の成立で労働力や資本の移動が活発になることで域内の格差も解消に向かい、経済力が拡大する。

 さらに、30年ないし40年先となると、現在ドル圏であるアジア地域に共通通貨に近いものができ、ドルとユーロとアジア通貨の三極体制になる可能性がある。2050年には中国が世界第1位、インドが世界第2位の経済大国になると予測されているように、経済力の向上を背景に人民元やインド・ルピーが強くなっていくのは間違いない。現在は、両通貨とも自由に他通貨と交換できないが、10~15年後には交換できる体制に移行するだろう。

――アジア地域の共通通貨は成立可能なのか? 

 ユーロのような共通通貨になる公算もあるし、人民元やルピーがアジア地域の基軸通貨となる可能性もある。円は共通通貨の一翼を担うことはあるだろうが、単独で基軸通貨となることはない。日本経済は今後、地位を低下させ続けていくからだ。