その手痛いミスとは、「雨傘運動」のリーダーだったジョシュアさんやアグネスさんら民主派の政治家を拘束したことだ。知名度のある彼らを拘束することで、若者たちを脅してデモの勢いを削ごうとしたのだが、まったくの逆効果になってしまった。

 保釈された後、ジョシュアさんやアグネスさんは世界中のメディアでの露出が明らかに増えた。明確なリーダーのいない今回の抗議行動では、彼らはあまり表に出なくなっていた印象だったが、衝撃的な拘束劇が世界中に伝えられたことで、彼らに再び注目が集まるようになってしまったのだ。

 現在、アグネスさんは日本のTVニュースや報道番組に、毎日のように登場している。彼女は頻繁にツイッターも更新し、「条例の撤回は喜べない。遅過ぎた」「デモ参加者から、失明などの重傷者、自殺者、1000人以上の逮捕者が出ている」「私たちは、五つの要求を求めて、これからも戦い続ける」などと発言を続けている。

 また、ジョシュアさんもツイッターで「ここ数週間で激化した警察の残忍さは、香港社会に回復できないほどの傷を残した。キャリー・ラム行政長官のこの後に及んでの撤回表明について、人々は『偽りのない』動きだとは信じないだろう」「各国に対しても、北京(中国政府)と香港政府による作戦に惑わされないよう呼びかける。実際彼らは何も承認しておらず、今後徹底的な弾圧が始まる」と訴えた。彼らの発言一つ一つを世界中のメディアが注視し、競って報道することで拡散される状態が続いている。

 さらに、ジョシュアさんは台湾を訪問し、「雨傘運動」時代からつながりがある台湾独立派の新興政党、時代力量や民進党の中枢メンバーらと面会した(第141回)。ジョシュアさんは、中国の「国慶節」(建国記念日)に当たる10月1日に向けて、香港への支持を示す大規模なデモを台湾で実施することを呼び掛けた。

 ところがその後、事態は急変。9月9日、「保釈条件」に違反したとして、ジョシュアさんは再び香港の空港で拘束されてしまったのだ。香港政府・中国共産党にとっては、前回と同じように「手痛いミス」となるだろう。

 一方、授業ボイコットを続ける大学生たちは、「五大要求」実現の要求に対する香港政府の回答期限を9月13日に設定した。香港政府が要求に応じない場合、香港島・セントラル(中環)かアドミラルティー(金鐘)でのゼネスト(業種をまたいでの大規模ストライキ)を計画するなど、さらなる行動を取ると訴えた。