「醜形恐怖症」は、ささいな欠点を気に病んで自分を実際より醜いと思い込み、過剰に悩み苦しむ心の病気だ。有病率は少なくともアメリカの成人で2.4%に上るとされるが、誰にも言えないまま辛い思いをする人も多く、本当の数字はさだかではない。

「美貌の女優を眺めたあとで、一般人の顔を見ると必要以上に欠点が目につきがち。ハリウッド女優のファラ・フォーセットにちなみ、心理学用語で“ファラー効果”と呼びますが、最近の人はスマホを手放さず、美しいタレントを目にする機会が増えている。なおさらファラー効果が働きやすいのでは」と、鍋田氏は説明する。

 アプリで加工された自撮り画像にとらわれる「スナップチャット醜形恐怖症」も問題になっている。もっと美しく映りたいという欲望が募る一方、修正画像と生身の自分のギャップに落ち込み、コンプレックスを持つようになるという。

「劣等感を克服しようと、美容整形クリニックに駆け込む人も多いでしょう。それで前向きな気持ちになれればいいのですが、中には何度手術を繰り返しても満足できず、かえって容貌を損なってしまう女性もいる。

 二重まぶた切開法を8回も受けて、まぶたが傷跡だらけになってしまった人、面長の顔を丸顔にしたくて、あごを削る手術などを半年ごとに繰り返している人も。多額の費用をかけた揚げ句、心がボロボロになり、精神科を訪れる人が後を絶ちません。客観的に見て、もともときれいな人が多いのですが、『二重幅が狭い』『左右のバランスが悪い』など、理想と少しでも違う箇所があると我慢できなくなってしまうようです」

40代後半から増える?
「皮膚醜形恐怖症」

 醜形恐怖症のピークは10~20代。男女ともに30代半ばになると症状は落ち着くとされている。ちょうど社会でも家庭でも責任が生じ、何かと忙しくなってくる年代。顔どころではなくなるのだろう。ところが、女性のみ40代後半くらいから再び醜形恐怖症が増えてくる、と鍋田氏は言う。

「みなさん美人だし、勤めも持っていて経済的にもゆとりのある人が多いですね。話を聞くと、若い頃からかなりモテた人ばかり。ところが、年を取り容姿の衰えを感じるようになってから、女性としての自信を失ってしまった、と言うのです」

 更年期障害から抑うつ症状が現れ、自己評価が下がりやすい時期。だが、そうでなくても、見た目の若さを失えば「人生の下り坂に入ってしまった」と悲観的になるのは無理もない。憂鬱な気持ちをさらに追い詰めるのは、ここ10年ほど続く美魔女ブームだ。いくつになっても若々しい友人たちと我が身を比べ、わずかな皺やシミを「許せない」と感じてしまう。焦ってエステや美容皮膚科に通いつめるほど不安が募っていく、“皮膚醜形恐怖症”ともいうべき女性が増えている、と鍋田氏は言う。