服薬を躊躇(ちゅうちょ)するような発言もあったので、「薬は自然な回復を後押しする働きを持つものです」と説明し、根気よく服薬を続けることを受け入れていただきました。従来の抗うつ薬の量を減らし、新たに処方した抗うつ薬の量を増やすなどの調整をしました。

 初診後4週間、3回目の診察では、仕事関連の資格試験の勉強を始めたものの、理解できずにいら立つと言います。資格試験を目指すことには一足飛びに現状を打開しようとする焦りや無理を感じましたので、「勉強を始めたのは良かったと思います。ただ資格試験のような長期的目標を達成しようとするより、まずは今日1日の行動を充実させましょう」と助言し、森田療法的な養生法を解説したパンフレットを手渡しました。

 初診後6週間、4回目の診察では、一度だけ映画を見に行ったが、何をしても苦しく、過去の自分と違いすぎると言います。

「映画を見て何か感じたことはありませんでしたか」と聞くと、映画のシーンに心が動くことはあったが、すぐに「こんなことをしていても意味がない」と否定的思考が生じ、気分が沈んでくるといいます。

 そこで、

「行動が広がり、映画館に足を運び、一時でも心が動いたという事実に目を向けましょう」

「こんなことをしていても意味がない、といった二念、三念(後付けの考え)が、さらなる苦痛となりますから、初一念(ふと生ずる自然な心の動き)に従って行動してください」

 と奨励しました。

 新たに処方した抗うつ薬を増量し、減らしてきた薬は中止しました。

◎回復後期の養生のポイント

「外相整えば内相自ら熟す」

 本来の状態の60~70%まで回復した回復後期では、気分は以前に比べるとだいぶ楽になっていますが、まだ意欲、根気が不十分な時期でもあります。ここまで回復してきたら、起床、食事の時間、就寝は大体一定にし、徐々に建設的な行動を増やしていきます。

 この患者さんは、初診後8週間、5回目の診察では、自宅に居ることの多い療養生活にくさくさしており、焦り、孤独感を抱いているとのことでした。その一方、後輩から就職について電話で質問を受けたときには、ソツなく対応できたといいます。また漢字検定の模試を受けたら、元気なときよりも好成績だったことから、「完璧に衰えたわけではないと思った」と言います。