倒れてもすぐには
救急車を呼んでもらえない

 今回、本を書くにあたって、欧州に飛んで、イギリスやフランスでアマゾンの物流センターに潜入取材した現地の記者たちにも話を聞きました。例えば、イギリスのジェームズ・ブラッドワース氏はアマゾンの物流センターと介護士、コールセンター、そしてウーバーの運転手の4つの仕事に潜入した人物ですが、どこが一番ひどかったかと聞くと、間髪入れずに「アマゾンが飛び抜けてひどかった」と断言していました。

 別の記者はフルマラソンで3時間を切るタイムを出すようなスポーツマンですが、それでもやっぱりきつかった、と。たった2週間とはいえ、50代の僕がどれだけ頑張ったか、わかっていただけるでしょう(笑)。

――日本の小田原(神奈川県)の物流センターでは、わかっているだけで業務中に5人の従業員が亡くなっています。

 BBCのアマゾン潜入番組では、仕事におけるストレスを研究する第一人者が「この種の仕事では、心身の病気のリスクが増すというエビデンスがある」と証言していました。もちろん、業務中に少なくとも5人もの方が亡くなっているという事実も重いけれども、取材を進めてさらに驚いたのは、救急車を呼ぶまでにずいぶん時間がかかっている点です。

 くも膜下出血で亡くなった59歳の女性の場合、倒れてから救急車が到着するまで1時間前後もかかっていました。なぜかというと、アルバイトは携帯電話の持ち込みが禁止されているし、アマゾンの物流センターでは、こうした場合の連絡系統が厳格に決まっているんです。発見者からリーダーに報告し、次にスーパーバイザー、そしてアマゾン社員…といった具合に。この連絡網をすっ飛ばして119番するわけにはいかないというのです。

 これはさすがに空恐ろしい話です。人命よりルールが優先するわけですから。物流センターの壁には、いろんな健康に関するポスターが貼ってあるんです。中には「早く救急車を呼びましょう」みたいなのもあったんですが。ゾッとしましたね。