――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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米金融街はスマートフォン「iPhone(アイフォーン)11」の見通しに確信を持てていなかったかもしれないが、アップルの個人投資家は盛り上がっている。おそらく、やや盛り上がり過ぎなほどだ。
iPhone最新モデルは約2週間前に発売された。アップル株はそれから4%余り上昇し、7日には1年ぶりの高値をつけた。一方、S&P500種株価指数はその間に2%近く下落した。景気減速と世界の貿易摩擦を巡る懸念が主な背景で、ほとんどが中国で生産される高価なiPhoneのメーカーにとっては、そのどちらも小さな問題ではないのだが。
今年のiPhone販売サイクルに関し懸念されたほど悪くなさそうな兆候が見え始める中、多少の関心が集まるのは当然だ。日本経済新聞は4日、アップルがiPhone 11向け生産を1割増やすよう部品供給企業に要請したと伝えた。複数のアナリストは既に、サプライチェーン(供給網)から同様の情報が得られたことを理由に予想を上方修正していた。ファクトセットによると、今会計年度(2020年9月まで)のiPhone出荷台数に関する米金融機関のコンセンサス予想は、最新モデルが発売された9月20日以降これまでに300万台分引き上げられている。
ただ、iPhoneは成熟期にある事業だ。目下の予想引き上げでも、今会計年度のiPhone出荷台数の押し上げ効果は1%未満にすぎない。iPhone売上高は依然として同期間に1%減少する見通しで、販売に占める廉価版モデルの比率が高まるとの見方を反映している。来年秋に導入されるとみられる第5世代移動通信システム(5G)対応iPhoneでさえ、2021会計年度のiPhone売上高を3%しか押し上げない見通しだ。