めまいのつらさより尿意の方が勝るようになった飛鳥さんは、ぺたぺたと四つんばいになってトイレに向かい、なんとか用を足すと、またはって布団に戻った。あとはもう、動けない。するとようやく夫の博司さん(仮名・55歳)が異変に気付き、声をかけてきた。

「大丈夫かい。具合悪いの?」

「うん。めまいがして、起き上がれないの。寝ていてもふらふらして気持ち悪い。だからごめん、朝ご飯の準備、してあげられない」

「それはいいよ。寝てて。でも、救急車とか呼ばなくて大丈夫?」

「うん。何年か前にも一度、あったでしょ。あの時は、翌日ぐらいには楽になったから、今日1日ゆっくり休んでみる」

 博司さんは「楽になったら食べて」と、バナナとペットボトル入りのお茶を飛鳥さんの枕元に置くと、仕事に出かけた。昼になると症状はだいぶ和らいだ。ただ、起き上がるとやはりふらふらするため、飛鳥さんは布団をリビングに持って行き、テレビを見ながら、1日中横になって過ごした。

(明日朝起きたら、どうかめまいが消えていますように)

 強く念じて就寝したものの、めまいは翌朝も治まらなかった。心なしか、前日より悪化している。寝返りを打つとさらにふらふら感が強まる。それに頭も痛い。頭重というのだろうか、圧迫されるような痛みだった。

 仕方なく、その日も1日布団で過ごし、夜になった。なんとか夕食の支度をしたいと思った飛鳥さんは意を決し立ち上がった。しかし、たちまち今回最悪のめまいに襲われしゃがみこむ。もはや、上体を起こしていることすらできなくなり、床に倒れてじっとしていたところに博さんが帰宅。

「頑張ったんだけど、起き上がれないの。助けて」

 泣きながら助けを求めると、あわてて救急車が呼ばれ、飛鳥さんは病院に搬送された。

症状は回復せず
寝たきり状態に突入

「恐らく良性発作性頭位めまい症ですね。検査の結果、体にも脳にも特に異常はありませんし、以前にもなったことがあるんですよね。耳石が動いて、平衡感覚がおかしくなる病気です。めまいはそのうち治まりますから、転んでケガなどしないよう、横になっていてください。あとは、簡単な体操がありますから、それをやってみてください。ただ、すぐに治るような体操ではないので、まあ根気よく、続けてみてください」