◇上だけをめざさずに横へ移る

 キャリアというと、その会社で上に登っていくことをイメージしがちだ。しかし、上に行けば行くほど、熾烈なポジション争いが待ち受けている。上に上がったところで、下のマーケットが増えるわけでもない。そこで著者がすすめるのは、視点を変えて「横の山」に登ることだ。対象となるマーケットを移し、そのマーケットでよそ者の視点と知見から、新しい価値を提供するのである。

 そのときのキーワードは「逆張り」だ。ライバルがいないか少ない「アウェイ」にスライドし、自分の資質や経験の中から相手に喜んでもらえそうなことを行う。好例といえるのは、お笑いの世界で時代をつかんだ西野亮廣さんである。彼はお笑いでの知見を生かし、絵本作家、オンラインサロンなど、新たな事業を次々と当てている。

◇事前の分析で会社との相性を8割つかむ

 いざ転職するとなると、転職先の企業に貢献できるのか、不安はつきものだ。もし前の会社に戻りたいと思ったとしても、一度退職すれば、自分のいたポジションには他の誰かがおさまってしまう。そう思うとなかなか転職に踏み切れないだろう。しかし、著者は新しい会社や仕事との相性は、事前に8割以上はつかめるというのだ。

 見るべきポイントは、「仕事」や「会社の価値観」と自分の資質がマッチするかどうかである。ある会社で優秀だった人が、同業他社に移ったら結果が出ず、普通の人になってしまったという話を聞いたことがあるだろう。仕事と本人の資質はフィットしているのに、このような事態に陥るのは、その会社のカルチャーと合わないからだ。

 著者は、会社のカルチャーを知るために、経営理念を「YES/NO」の判断基準で分析することを推奨している。会社の経営理念を取り出し、それを「YES」とするのであれば「NO」は何かを考える。それによって、会社のカルチャーの背骨が見えてくる。

 たとえば、「みんなで決める文化」と経営理念にあるとしよう。これを「YES」とすれば、反対のキーワードの「NO」は何かと考える。そこで「トップダウンがない」が思いついたとしたら、それによって起こりそうな問題を考えるのだ。すると、「個人に権限がなく、いちいち決済承認が必要なのでは」「意思決定が遅いのでは」といったことが思いつく。そして、「ベンチャーというが、実は堅実なカルチャーなのではないか」といった仮説が立てられる。