「うちのパパは別室で寝るの」
洋子さんが言いました。これを聞いた友人のポールさんは「洋子さんの父親が?」と、困惑……。
実はパパとは旦那さんのことです。このように日本では、結婚当初こそ名前で呼び合っても、子どもができると「父さん(パパ)・母さん(ママ)」、孫ができると「お爺さん・お婆さん」と、家庭内での役割の進化や年齢に応じ互いの呼び方も変わる夫婦が多くいます。なぜでしょう? その背景には、予想以上に奥が深く複雑な、日本人社会の文化的特質が絡み合っています。
ニッポンの不思議
「役割夫婦」
多くの外国人の友人が「なぜ日本の夫婦は名前ではなくパパ(父さん)とかママ(母さん)と呼び合うの?」と僕に質問をしてきます。パパ=父親、ママ=母親と単純にとらえる彼らにとって、この夫婦間の呼び方はニッポンの不思議の1つです。
世界中を知るわけではありませんが、韓国や東南アジアなど一部の地域を除き、多くの国々では、家庭内の役割が変わろうが年をとろうが夫婦間では名前で呼び合うのが基本ではないでしょうか(日本のように「あなた」「きみ」などの二人称代名詞やニックネームを使うことはあるものの)。また、西洋諸国を中心に、結婚年数や年齢とは関係なく愛情表現で呼び合う夫婦も多くいます。英米の「ダーリン」フランスの「シェリー」などです(尚、日本には同様の愛情表現はありません)。
さらに最近は、外国人だけではなく、当の日本人にもこの「役割夫婦」に疑問を抱く方々が増えているようです。先日、読売新聞くらし面の夫婦のあり方を取り上げるコーナー「結婚指輪してますか?」の担当記者の方から取材を受けました。「そもそも日本ではなぜ名前を呼ばない夫婦が多いのか?」について僕の見解を聞きたいといいます。