冒頭の理沙さんのケースのように、ゾルピデムなど非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬にも、耐性を生じさせ、乱用されやすいものがある。

「エチゾラムもゾルピデムも、効き目のある薬なのですが、その分、依存に陥りやすい人もいます。薬が足りなくなることが不安で、少しでも多く手に入れようといろいろな手段を講じる患者さんもいるようです」

 処方箋には“3錠”と書かれているのに、“8錠”と書き換えて薬局に提出し、大量に薬を入手していたケースも見つかっている。また、エチゾラムは2016年に法規制される前は個人輸入できたため、自費で追加調達していた人も少なくない。

 ただし、当然ながら睡眠薬、抗不安薬の服用者がみんな処方薬依存になるわけではない。医師の指示を守ってうまく服用し、不眠の苦しみを克服している人が大半だ。乱用する人が増え、処方が制限されることにでもなれば大勢の人々が困ることになる。複雑で一筋縄ではいかないのが、処方薬依存問題の悩ましさといえるだろう。

頑張れば頑張るほど
眠れなくなる病気

「そもそも薬など飲まず、自然に眠れるのを待てばいいのでは」と不思議に思う読者もいるだろう。だが、そう簡単にいかないのが不眠のやっかいなところだ。

 特に、不眠の約2割を占める「原発性不眠」の場合、他の身体や精神の病気がないにもかかわらず、慢性的な睡眠不足が続く。眠れないことへの過度のとらわれから緊張してしまったり、夜、頑張って眠ろうとするあまり、かえって眠りにくくなるのが特徴とされる。「自然に眠くなるのが難しい病気」といえるかもしれない。

 それだけに、睡眠負債についての一連の報道で、不眠に対する恐怖を覚え、ますます症状が悪化した人は多いのではないか。

「あらゆる産業は人々を依存させることで繁栄します。ギャンブル依存もアルコール依存も、背景には依存を助長させる社会の仕組みがある。不眠の人々の処方薬依存も同じでしょう。7時間眠れないと健康を害するという警鐘が、あおりにつながっている部分もあるのでは」と梅野氏。