デフレ脱却の熱意が冷めてきたアベノミクスの行方安倍政権は本当に物価を上げたいのか。実際のところ、日銀は困っているのではないか Photo:PIXTA

消費税対策で見えてきた
安倍政権はインフレファイター

 デフレ脱却といえばアベノミクスのスローガンだが、10%への消費税率引き上げに合わせて打ち出された対策(消費税対策)を見ると、安倍政権は物価を上げたくないようだ。

 軽減税率が導入されなかったと仮定して、8%から10%へ消費税率が引き上げられ、それがフルに販売価格に転嫁されたとすると、非課税品目が約3割あるので、消費者物価は1.4%程度上昇する計算となる。しかし、実際には政府の消費税対策がかなり物価上昇を抑えそうだ。

 まず、食料品などへの軽減税率の適用だ。軽減税率が適用される品目は約2割程度なので、物価の上昇を0.4%程度抑えることになる。また幼児教育の無償化は、幼児を抱える若い世帯の負担を軽減することが目的だが、物価統計に与える影響は大きく、0.6%程度の押し下げ効果がある。

 さらに、消費税対策ではないが、政府が通信会社に強く要請した携帯通話料金の引き下げによって、消費者物価はすでに0.1%程度押し下げられている。

 政策が影響した物価の押し下げ効果は、合計すると1.1%程度となり、消費増税によって想定された物価の押し上げ効果(1.4%)をかなり軽減することになる。9月の消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率は前年比0.3%だが、増税後も物価上昇率は0%台後半にとどまるのではないか。