デフレとの20年戦争を支えたのは
「デフレは悪」という踏み絵
日本では、2000年前後から物価の下落が続くようになり、翌01年には政府の月例経済報告にデフレの記述が表れている。政府がデフレとの戦いを始めたのがこの頃だとすると、日本はかれこれ20年近く戦っていることになる。国民が2%のインフレを期待しているとも思えないが、日本でデフレとの戦争が20年も続いた原動力は何か。
「インフレ政策」と呼ばずに「デフレ脱却」と呼ぶ巧妙さもあって、国民はデフレ脱却という言葉に何か悪い状態を脱するという良いイメージを重ね合わせたようだ。メディアの報道も、日本経済の前に「デフレで苦しむ」という枕詞をつけ、景気回復の前には「アベノミクス効果で」と一言加えることが多かった。
「緩やかなデフレがそんなに悪いことなのか」「安倍政権の成立と同時に景気は回復したのだから、アベノミクス効果による回復ではない」などと発言するエコノミストや評論家は、メディアではあまり歓迎されなかった。
こうした報道に接する国民の間には、「物価が下がることがなぜ悪いのか」と思いつつも、「デフレは悪いこと」というイメージがかなり浸透し、「アベノミクスがどういうものかはよくわからないが、とりあえず株価が上がっているから『まあいいか』」という評価が広がったと思われる。
「デフレは悪という踏み絵を踏まされている」といったら言い過ぎかもしれないが、「デフレは悪いことだ」というイメージはかなり刷り込まれたのではないか。