――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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大暴落はやって来る。
だが慌てる必要はない。目前に迫っているというわけでは恐らくないからだ。めったに起こらないことなのに「大暴落」という言葉は投資家の注目をしっかりと引きつける。来る29日はその極めつけである「ブラック・チューズデー(暗黒の火曜日)」の90周年。富を破壊する大混乱がやって来るタイミングについて、いつも以上に思案するのもごく自然なことだ。
もちろん、1929年以前にも米株式相場の暴落はあった。例えば1907年の金融恐慌は、やはり10月に混乱が頂点に達した。1日の下げとしては抜きんでて大規模な暴落になったのは1987年10月だ。パターンが見えてきただろうか。いや、そんなものはない。ただ、偶然が重なった結果、理不尽なことだが10月は市場に近づくのが危険な月との定評になってしまった。
では、大暴落で利益を得る奥の手とは何か?ひとつ実証されている手法とは、大暴落がやって来るぞと大胆に予言し、自らの洞察を有料で分け与えるものだ。ロジャー・バブソン氏は1920年代にニュートン物理学に基づくという売り込みのニュースレターを発行し、この手法の先駆者となった。
バブソン氏が1929年の暴落の数週間前に「遅かれ早かれ大暴落はやってくる、それは恐ろしいものになるかもしれない」と言ったのは有名な話だ。それ以前にも数回にわたって悲観的な予言をしていたという事実にもかかわらず、これによって同氏の富と名声は確立された。