会談時間は最終的に「21分」になった。実際は、ほぼ20分という時間だったが、「21分」としたかったのは韓国。会談終了後、韓国側は日本に「21分で発表しても良いか」と、20分超にこだわった。

 少しでも長く、関係改善に向けて日韓が話し合ったという実績を示したいという思いがあったようだ。

 同時に、韓国側は「何とか成果のある格好で発表したい」と訴えたという。

 日韓の事務方ですり合わせた後、李首相に同行していた韓国の趙世暎第1外務次官が、「両国は重要な隣国として、韓日関係の困難な状況をこのまま放置できないとの認識で一致した」と、会談結果について発表した。

 関係修復に前のめりの韓国の姿勢は、事前の水面下での外交当局者同士の折衝でも目立った。

 即位の礼に合わせた李首相の訪日が決まると、会談での具体的な成果を目指し、外交チャンネルで日本側に接触を求めた。

 10月16日には、外務省の滝崎成樹アジア大洋州局長が訪韓した。滝崎氏はソウルで韓国外務省の金丁漢アジア太平洋局長と協議したが、双方は原則論を応酬するばかりで、全く進展がなかった。

 焦った韓国側はその週の週末、趙世暎第1外務次官を極秘で日本に派遣し、秋葉剛男外務次官との協議を行った。

 趙氏は7月にも極秘に訪日し、やはり秋葉氏との間で徴用工問題の解決に向けた協議を行っている。

 7月の協議では、韓国側は、徴用工と関係した日韓企業に加え、韓国政府も資金を拠出して財団を設立し、元徴用工らに支給する「1+1+α」案を提案したが、日本側は受け入れなかった。

 李首相訪日前に行われた10月の協議は、双方の合意で「(協議自体を)なかったことにした」(日韓関係筋)ため、明らかになっていない。だが、外交チャンネルでは、この「1+1+α」案を前提に、日本企業に韓国側が別途補助金を支給する案や、日本企業が負担する名目を文化交流などにして徴用工問題と切り離す案などが浮上していた。

 趙氏はこれらの提案を日本側に投げかけたとみられるが、秋葉次官は、首相官邸の強硬な態度を受けて、「日本政府と日本企業の負担は認められない」という立場を崩さなかったという。