だが疑惑への国民の関心が強まる中で、曺氏の動きは、「抗日・反日運動を、自身の疑惑隠しに利用した」との国民の不信を招いた。韓国では「親日派」というレッテルを貼られることを嫌がる国民感情があるからだ。

 文政権自体も曺氏を巡る疑惑では、「検察改革は必要不可欠」という進歩・左派の「陣営の論理」を強調してきたために、曺氏に辞任を迫る時期が遅れるという失態を招いた。

 文大統領の「国民の多様な声を聞いた」という発言は、こうした「陣営の論理」を乗り越えて、新たな政治手法を模索する意欲の表明だった可能性がある。

 大統領の姿勢の変化で、政権内でも日韓関係の改善を望む声が相対的に大きくなっている。

 たとえば、日韓GSOMIAについては、鄭景斗国防相や金尚祚大統領府政策室長、南官杓駐日韓国大使らが相次いで、GSOMIAが有益だという発言を繰り返している。

 韓国政府はこれまで、日韓GSOMIA破棄は文大統領の決断だったとしてきた。また、韓国では大統領がさまざまな人事権を一手に握り、非常に強い権力を握っている。

 こうした中で、GSOMIA延長を望む声が政権内から公然と上がっているのは、文大統領自身の姿勢の変化を反映した結果だとみられる。

 また韓国内では、日韓の険悪な状態が経済や安全保障に悪影響を及ぼすことへの危機感が強まっている。GSOMIA破棄を決めた韓国に対し、米国は重ねて懸念する考えを伝え続けている。

 経済成長率は2%を切る可能性が高まっているし、文政権が「朝鮮半島に平和がやってきた」と喧伝した南北関係は破綻寸前だ。

「八方ふさがり」という危機感が、日韓関係修復による局面転換を期待する韓国メディアの報道にもつながった。