血液検査の結果や食事制限の内容を電話で伝えると、自分の体にピッタリの食事を冷凍の弁当にして、自宅に宅配便で届けてくれる──。
ファンデリー社長の阿部公祐は、それまで表舞台に出ることが少なかった栄養士たちの専門性を生かし、新たなビジネスモデルで健康食の宅配サービスに新風を吹き込む挑戦者だ。
食事の宅配サービスは、同業他社が多く、競合がひしめく。だが、社員として抱えた栄養士たちが一つ一つのメニューを開発、それぞれの顧客の健康状態に合った食事を1食約500円という安さでサポートするのが同社の強み。その徹底したサポートと独自の流通ルートで業績を伸ばしている。
東京・赤羽に本社を構える同社は、社員34人のうち、実に26人が栄養士で、糖尿病や脂質異常症、高血圧、痛風といった生活習慣病から、食事制限の厳しい腎臓病や糖尿病性腎症に至るまで、あらゆる病気をカバーしたメニューを開発している。
その数は毎シーズン200種類にも上るが、「できるだけ旬の食材を食べてもらいたいから」と、年に4回メニューの半分を入れ替える徹底ぶりだ。
そうした食事を掲載したカタログを全国で約1万の病院に配布し、通院・退院する患者に対して健康状態に合わせた食事を提案する仕組みだ。こうして、宣伝費用をかけずに会員数を増やすことに成功している。
味や便利さではなく
目に見えてわかる
検査数値の改善で訴求
意外なことに、阿部は会社を起こしたときには、こうしたビジネスモデルは「考えてもいなかった」という。
そもそも阿部は決して「食」の世界のプロではなかった。起業前は保険会社の営業マン。1996年に新卒で朝日火災海上保険に就職し、企業内代理店を設置してもらうべく、ひたすらベンチャー企業の経営者を説得して回る日々を送った。