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高市早苗首相は「責任ある積極財政」と強い外交安保を掲げ、サッチャーのような改革者を自任する。だが衆院で3分の2の絶対多数を得た今こそ、族議員が力を増しやすい。17分野の成長戦略で政府主導が過ぎれば市場原理を損ねる。市場原理を尊重しつつ投資を進め、農業、医療など既得権がはびこる分野の改革を進めることが日本経済再生への道である。(昭和女子大学特命教授 八代尚宏)
「絶対多数」が生む逆風
族議員と戦えるか
高市早苗氏が衆議院選挙で圧倒的多数の支持を得て第105代首相に就任した。首相の所信表明演説では、強い外交・安全保障とともに責任ある積極財政を唱えた。
高市首相は、今後とも高い国民の支持率を背景に長期政権を維持し、自ら尊敬する英国のサッチャー首相のように、日本の歴史に名を残せるだろうか。その際の鍵となるのが、自民党内で既得権を擁護する政治家との新たな戦いである。
自民党が衆議院で3分の2を超える絶対多数を占めたことで、政策運営の自由度は高まったものの、同時に業界団体への資金配分や政策形成に影響力を及ぼす「族議員」の存在感も増した。この「少数者の大きな利益」が国民全体の利益を損なう状況を放置すれば、日本経済の長期低迷からいつまでも脱することはできない。
サッチャー首相の基本スタンスは保守本流の「小さな政府」であった。自由な経済活動を妨げる保護主義的な規制の改革と公的企業の民営化で英国経済の競争力を強化した。
高市首相も、一律のバラマキをするのではなく給付付き税額控除制度の導入で、低所得層に重点を置いた効率的な所得再分配政策を唱え、大き過ぎない政府を志向していることは共通している。
他方で、高市内閣が唱える日本経済の成長戦略の対象となる17分野について、政府主導で民間企業の呼び水となる投資を行うことには、やや懸念がある。
次ページでは、17分野のうちで政府が主導するのに向かない分野を挙げるとともに、高市内閣がリーダーシップを持って進めるべき改革を提言する。







