誰しも陥る可能性があるアルコール依存症。梅野氏は「納期に追われる仕事をしている人に目立つ」と、自ら診療してきた印象を語る。タイトなスケジュールで根を詰めて働くビジネスパーソンほど、一区切りついたときに飲んだ1杯のおいしさ、解放感が忘れられない。だからことさら、お酒にハマりやすくなる。

「一仕事終えてほっとして、さてどうしようかなとなったとき、お酒は一番手っ取り早い発散法ですよね。当たり外れがあるマンガや映画と違い、確実に気分を上げてくれる。おまけに自宅で晩酌する場合は、その快楽が1缶たった数百円で手に入るわけですから。やがて、“パブロフの犬”のように条件反射が起こり、“一仕事終えたら飲む”が習慣化されていく…。いつしか “飲むために仕事する”というように順番が逆転、酒が欠くべからざるものになってしまうのです」

 ブラックバイトなど、低待遇でキツイ仕事をしている人も要注意だ。

「つらい現実、不安な未来を忘れさせてくれるのがお酒。先述のとおり、アルコール依存症はどの社会階層でも起こりえるものの、やはり貧困とは密接な関係にあるといえます」

 体質的に酒乱になりやすく、一気にアルコール依存症の最終章、“社会的信用の喪失”まで突っ走ってしまう人も見られる。酔うと突然性格が変わり、暴言、暴力に及んだりするが本人は記憶を失っている、などだ。

「飲酒にからむ刑事事件を起こした人など、酒乱の人にお酒を飲ませ、血中アルコール濃度を測定すると不思議なことが起こります。普通の人は徐々に濃度が高まっていくのに対し、酒乱の人はある段階から突然、急激に濃度が高まっていく。その分、大脳皮質にまひが生じやすく、道徳観念を見失ってしまうと推測できます」

 なお酒乱体質には、アルコールを分解する酵素の遺伝子が関わっていることが、専門家の研究によって明らかになっている。