また、大学の商品を「卒業生」と見るとして、その質に影響を与える要因を分析すると、(A)入学時の人材の質と、(B)大学教育での能力伸張などの追加価値とでは、(A)の影響が大きい場合が圧倒的に多いのが現実だろう。

 筆者は芸術に関しては門外漢だが、例えば東京芸術大学の卒業生の音楽なり絵画なりの技芸における素晴らしさの多くは、入学段階での技能や素質で大半が説明されるのではなかろうか。

 もう少し分かりやすい例でいうと、その実社会での有効性には大いに議論のあるところだが、東京大学の卒業生の「学力的秀才性」の大半は、入学前にもともと持っていたものであって、大学で急に伸びたものではないように思われる。

 ビジネスとして「国立大学法人」である東京大学を考えると、卒業生の秀才的な質を落とさないことが肝心であり、そのためには入学者の選別に最善を尽くす必要がある。民間の英語試験を使わないとした東京大学の見識は、ビジネス的にも正しかったのではなかろうか。

 東京大学が「東大ブランド」の価値を守ろうとすることは、大学の研究・経営両面にとって良いことだろうし、卒業生や在校生、さらにこれから東京大学を目指そうとする将来の受験生にとっても良いことだろう。

 大学は自らのブランド価値を定義して、これを守り、育てるための戦略を堂々と立案・実行すべきだ。

 例えば東京大学は、同大学が求める入学生の選考に合っていると思う同大学独自の入学者選考を行えばいい。

入学選考方法で「多様な価値」を目指せ
大学に画一性を求めるべきではない

 一般社会で評価される人材の「質」には細かく見ると多くの種類がある。さまざまな分野の知識や技術という場合もあるし、何らかの処理能力、多くの分野にわたる技芸や体力、人格的な特徴、持っている人的なネットワークなど、さまざまだ。