中国の街並みPhoto:Tuul & Bruno Morandi/gettyimages

日本だけではない
中国でも盛り上がる「代行サービス」

 最近、中国で「代行経済」(中国語:代経済)という言葉を目にする。それは忙しい顧客の代わりに、日常生活の諸々の用事を引き受けるサービスだ。

 日本でも、勤めている会社を辞めづらい社員が代行会社に退職手続きを依頼する「退職代行」なるものを耳にするようになったが、そもそも「代行サービス」はそれほど一般的ではない。しかし中国では、日本人が聞くと驚くような代行サービスが、すでにたくさん生まれている。それは、サービスの提供者とお客が自由に、簡単に繋がることができるインターネットの発達によるところが大きい。今回は、そうした中国の代行サービス事情を紹介しよう。

 まず、典型的な代行サービスとしては、海外旅行に滅多に行けない顧客のために、海外に住む中国人が顧客の代わりに買い物するという「代理購入」や、病院での順番待ちを代わりに行う「番号取り代行」がある。

 なぜ、順番待ちを人に頼むかというと、中国の病院で診てもらうには、まず番号を買わなければならないからだ。有名な病院は受診希望の患者が多いので、番号の“争奪戦”は激烈だ。特に、レベルの高い「専門家」と称される医者の番号は競争率がとても高い。だから、番号を取るために明け方から並ぶということも珍しくない。

 今はインターネット上でも手続きができるようになっているが、代行サービスに頼むという選択肢もある。その他にも、忙しい人たちに向けた役所での手続きを代行してくれるサービス、文書の発送サービス、自分のスペックではうまくできないことを代行してくれるスピーチ原稿代筆サービスなど、「代行サービス」は多様化している。

 代行サービスで今ヒットしているのは、ゴミ捨て代行サービスだ。7月に上海でゴミ分別が義務付けられ、間違って捨てて、関係スタッフの是正勧告を拒否した場合、罰金200元(約3080円)が課せられる。ゴミを分別して捨てる時間帯は団地によってまちまちだが、たとえば午前7時から10時までとされている団地の場合、家から勤務先まで離れている人は、早く出かけなければならないため、7時にゴミを捨てるのができないこともある。

 そういう人に向けて、代わりにゴミを分別して捨てるサービスが大ヒットしている。ゴミ分別の義務付けは北京にも拡大するため、この手のサービスに対する需要は今後も伸びるだろう。