【上海】電気自動車(EV)向けバッテリー市場で、ほぼ無名だった中国企業が世界最大手のメーカーになっている。
その背景には、中国政府が世界の自動車メーカーにとって選択の余地があまりない状況をたくみに作り出したことがある。
中国は断トツで世界最大のEV市場であり、この急成長する産業で優位に立つため、数年前から外資自動車メーカーに中国企業のバッテリーを使用するよう圧力をかけ始めた。その需要を満たす大規模なバッテリー生産能力を持つ唯一の企業が、寧徳時代新能源科技(CATL)だった。
自動車メーカーは、渋々ながら中国政府の方針に従った。独ダイムラーの幹部は2017年にCATLの本社を訪れた際、会議開始直後にいら立ちをあらわにした。当時CATLのプロジェクトマネジャーを務めており、ダイムラー幹部に対する技術的な説明を準備したジャン・リンフェン氏はそのときの様子をこう振り返る。