9月にトラックと電車が衝突した京急電鉄は12日、暫定的な再発防止策を発表した。この発表資料を読み解くと、京急の安全意識が十分なレベルでなかったことが垣間見える。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
再発防止策に垣間見える
安全意識のマズさ
今年9月、京急電鉄神奈川新町~仲木戸間の神奈川新町第1踏切で発生したトラックとの衝突事故。京急は12日、暫定的な再発防止策として、踏切支障報知装置が支障物を検知時した際に作動する発光信号機の増設と、発光信号機を確認した際のブレーキ取り扱い基準を見直すと発表した。しかし、この発表を見てもなお筆者は、京急の安全意識に疑問符を付けざるを得ない。
鉄道に関する技術上の基準を定める省令は、踏切支障報知装置の発光信号機について、踏切の支障個所までに停止できる地点に設置することとしている(詳細は「京急踏切事故で垣間見える安全対策の問題点、他の私鉄と何が違ったか」参照)。
しかし今回の事故では、遮断機が閉まる前に支障報知装置が作動していたにもかかわらず、踏切内で立ち往生していたトラックと衝突してしまった。そうなると事故原因は「発光信号機の視認が遅れた」か「運転士のブレーキ操作が遅れた」かのどちらかということになる。
京急は事故後、筆者の取材に対して、運輸安全委員会の調査報告と神奈川県警の捜査結果を待つとして、事故原因への言及を避けたが、今回発表した暫定的な対策に「発光信号機の視認性」と「運転士のブレーキ操作」の両方の改善が含まれていたことからも、京急もこの2点が問題の核心であると考えているとみて間違いないだろう。では、京急の対策はこれで十分なのだろうか。
1つ目の論点は発光信号機の視認性だ。京急は当初、遠方発光信号機(踏切から最も遠い位置にある発光信号機)は踏切中心位置から約340mの位置に設置されており、踏切の600m手前から視認できると説明していた。ところが今回の発表では、遠方発光信号機の設置位置は約390m地点で、実際に視認可能な距離は570mであったと訂正している。
また遠方発光信号機の設置基準についても「600m手前から視認できる個所」ではなく「進路を支障する個所までに停止することができる距離(時速120キロの場合、停止距離517.5メートル)」に訂正した。