香港デモ再び緊迫、大学が新たな主戦場に
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【香港】医師のチュー氏は患者に縫合処置を施すのに、普段より手間取っていた。香港中文大学(CUHK)の体育館内に設置された簡易治療所で同氏が手当てしていたのは、デモ隊と警察との衝突で負傷した若い学生だった。

 飛んできた催涙ガスの弾筒で頭部を負傷したその女子学生は、膝を抱えて痛みに耐えていた。チュー医師は、ボランティアが握っている懐中電灯の明かりを頼りに、麻酔なしで学生の頭部を4針縫った。医師は自身に影響が及ぶことを恐れ、姓名は明らかにしなかった。

 中文大学では12日、終日にわたり警察と学生による衝突が続き、数十人のデモ参加者が治療を受けるため、大学構内に複数設置されたこのような簡易治療所を訪れた。

 学生はバリケートを構築するとともに火を放ち、火炎瓶を投げつけるなどして、警官がこれ以上構内に侵入しないよう抵抗した。一方、警察は催涙ガスを大量に放射。ガスマスクなしでは周りは見えず、呼吸もできないほどだった。その後、放水砲も続いて投入されたが、現地時間午前0時を前に双方は一時休戦で合意し、警察は撤退した。5カ月に及ぶ香港デモで、「一時休戦」が成立した初めての事例とみられている。

 広い大学構内の周辺には、老若男女の学生や支持者らによる人間の鎖が2キロ近く続いた。12日夜遅くには、水や食料、生理食塩水などの物資が簡易治療所や「前線」へと送られた。大学周辺に警官の姿はもうなかったが、日付が変わる頃には、学生は再び長い戦いへと向かう体勢を整えており、中文大学は十分な備えを確保した要塞(ようさい)と化していた。

 中文大学はここにきて、学生のデモ隊と警察官が最も激しく衝突する主戦場となった。これは象徴的な動きでもある。大学構内には、1989年の天安門事件で虐殺された中国人学生を追悼するために建造された「民主の女神」像が立っているためだ。